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副主任研究員 中井 正人
「当たり前」のことをもう一度考える

先日、久しぶりに東京へ出かけた。駅のエスカレーターに乗ろうとすると、後ろから邪魔だといわんばかりに若い女性に左へおされた。その女性は振り返ることもなく、急いでエスカレーターを駆け上がっていった。私も荷物を持っており、相手からすれば「場所を取って邪魔だ」という思いがあったのかも知れない。急いでいるのはわかるが「すみません。通して下さい」と一言あってもいいのではないか。それが、当たり前の話だと思う。

そんな話を友人としていたら、エスカレーターの立ち位置の話になった。ご存知の通り、東京は左側に立ち急ぐ人は右側を通り追い抜いていく。大阪は逆に右側に立ち左側を通り追い抜いていく。

私も当たり前のように、東京に行けば左側に立ち、大阪や奈良では右側に立つ。理由など考えたこともなかった。それが「当たり前」と考えていたからだ。

理由には諸説ある。昔、武士が多く住む江戸では刀の鞘がぶつからないよう左側に寄った。一方、大阪は商人の町でそろばんやお金を右手に持って歩くため、その名残で右側に寄るようになったという説が有力だそうである。他にも大阪万博の時、国際的な基準に合わせてエスカレーターなどの公共の場では右側に立ち左側を通行することを呼びかけ、そのまま大阪で定着したとする説もあるそうだ。

ところで、車の場合日本は左側通行である。しかし世界的には右側通行の方が圧倒的に多い。日本以外の左側通行の国はイギリスやオーストラリアなど少数である。

世界では今でこそ右側通行が多数派だが、実は中世までさかのぼるとヨーロッパ各国のほとんどが左側通行であったらしい。フランス革命期にナポレオンの指示により右側通行に変わったという記録が残っているそうである。ナポレオンは全盛期ヨーロッパの大半を支配下におき、その過程で道路整備が行われ右側通行にしたというのである。単純にナポレオンの剣の利き手が左であったためという説や、ナポレオン軍が敵の左翼を重点的に攻撃する戦法を得意としていたという戦術的な観点から右側通行にしたのではないかという説があるが定かではない。

このように日頃「当たり前」と思っていることにも様々な理由がありそうである。現代はスピードの時代といわれるが、時には立ち止まり、「当たり前」と思っていることをもう一度考えてみることも新たな発見があって面白いのではないだろうか。

投稿者:副主任研究員 中井 正人|投稿日:2017年3月