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「フェルミ推定」で頭の体操を (2019年5月)
主席研究員 島田 清彦
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●フェルミ推定とは?

「フェルミ推定」という言葉は知らなくても、「シカゴのピアノ調律師の数は?」という質問を聞いたことがある人は多いのではないか。この質問は、シカゴ大学で世界最初の原子炉の開発を行った、ノーベル物理学賞受賞者のエンリコ・フェルミが授業で学生に対してしたとされる有名な問いかけである。

この質問のように、実際に調査することや、すぐには見当のつかないような難しい数値を、いくつかの手がかりを元に論理的な根拠に基づいて推論し、短時間で概算数値を出す思考法のことを「フェルミ推定」と呼んでいる。


●フェルミ推定の思考手順

いきなり答えを出すのではなく、適切な切り口・仮説を見出して、論理的に数値を導いていく。
①前提条件を確認する

問われている数値の定義や条件(期間・範囲等)を自分で仮定する、あるいは相手に確認する。
②切り口・アプローチ方法を検討する

何をベースにして、どのような計算で数値を導くかの切り口を考える。人口ベースは「人口×利用率・単価等」、面積ベースは「単位面積あたりの個数×全体面積」などが考えられる。需要(消費者)と供給(企業)の両面から考えることも有効。
③仮説を立て、式をモデル化する

問われている数値について仮説を立て、式の各項を因数分解するイメージで、未知の数値を既知の要素または推定可能な要素になるまで分解・モデル化(足し算型、掛け算型、複合型)する。
例:エアコン設置台数=日本の世帯数×エアコンを所有する世帯割合×1世帯当りの平均所有台数
④各項目に数字を当てはめて計算する

ざっくりとした推定値を仮定して計算。例えば、世帯数は、日本の人口を1億2700万人、世帯当たり平均人数を2.5人として、1億2700万÷2.5=5080万(世帯)とする。


●フェルミ推定に求められる姿勢・能力
 ・論理的に物事を捉える癖をつける。
 ・世の中の色々な数字に興味を持つ。
 ・難解な課題に対して意欲的に取り組む。
 ・問題の全体を俯瞰し、解決すべき課題を特定する。
 ・複数の切り口を考えて比較検討する。
 ・ツリー構造や2軸(事象)マトリックスを活用する。
 ・情報が少ない中でも自分なりの仮説を立て、妥当性の高い解を出す。必要に応じて柔軟に修正する。
 ・具体的な状況を想像し、根本的な見落としを防ぐ。
 ・議論などを通じて解を向上させる。
 ・あまり精緻なモデル化を考えようとしない。
 ・仮定で置いた数値に破綻がないかを改めて検証する(ネット検索等で正しい数値を確認する)。


●「フェルミ推定」で頭の体操を

フェルミ推定は、正解の数値を当てるものというよりは、思考プロセスを楽しむものであり、洞察力を鍛え、数字のセンスを磨くのに役立つ。

フェルミ推定は、紙とペンさえあれば、どこでも取り組むことが出来る。関連書籍を購入して、過去問に挑戦するのも良い。また、自分の身の回りのさまざまな数値や、街を歩いていて興味がわいた物の数量などをフェルミ推定で求める練習をしても、頭の体操、論理的な考え方の訓練にもなる。
【フェルミ推定の例題】
 ・「A商店の売上高は?」
 ・「〇〇県内のコンビニの店舗数は?」
 ・「日本中にある電柱の数は?」
 ・「ネット通販における書籍販売の市場規模は?」
 ・「トイレットペーパーの市場規模は?」
 ・「関西国際空港の年間利用者数は?」 など