一般財団法人 南都経済研究所地域経済に確かな情報を提供します
文字サイズ

農山漁村地域の活性化には何が必要か(2015年1月)
主席研究員 丸尾 尚史
PDF版はこちらからご覧いただけます。

■農山漁村地域に関する調査の結果

農山漁村など過疎地域等の集落では、人口減少や高齢化が進行する中、商店の閉鎖や公共交通の利便性低下などにより住環境が悪化し、それに伴い空き家や耕作放棄地が増加するなどの社会問題が発生している。国土交通省の「集落状況調査」(2006年)によると、10年以内に消滅の可能性がある集落が全国に423件、いずれ消滅する可能性のある集落は2,220件あり、将来的に存続できない集落は合計で2,600件を超えるなど、多くの地域で集落の維持・継続が危ぶまれている。

そういった状況の中にあって、都市部の住民が農山漁村地域をどのようにみているのかを国土交通省の「農山漁村地域に関する都市住民アンケート」により確認してみたい。


調査概要:平成24年10月に東京都23区内及び全国の人口30万人以上の都市在住の20~70歳未満を対象にインターネットにて実施。有効回答数3,320件。

同調査によると「農山漁村地域に対する印象やイメージ」としては、ほぼ全ての回答者が農山漁村を「大切」と思っており、その理由として「食料や水を生産・供給している」「多様な自然環境を有している」「日本の風土ならではの景観が残されている」の3項目は7割以上が回答している。一方で、「農山漁村地域とどのように関わりを深めたいか」という点については、観光などにより「ときどき訪問・滞在する」が46.5%で最も多く、都市部のアンテナショップ訪問や農産物を直接購入するといった「居住や訪問以外の方法での関わり」(31.4%)が2番目に多い。反面、「農山漁村への移住」(3.6%)、「都市部と農山漁村の二地域居住」(5.4%)は少数で、そもそも「関わりを持ちたくない」とする回答も13.2%ある。

また、農山漁村地域を訪れたことのある人のうち、作業の手伝いやボランティア活動などへ参加した経験や今後の参加予定についても、「参加したことがない」が大多数を占めており、「今後、参加してみたいと思わない人」も約半数を占めるなど、積極的に参加または参加予定の人は少ない。


図1

■農山漁村地域の活性化にむけて

アンケート結果からは、都市部の多くの住民は、農山漁村地域の自然は大切で維持していくべきものと捉えてはいるが、ボランティア活動や移住等を通じてその維持・継続に関わっていくことはさほど前向きには考えていないようである。しかし、観光訪問や物品購入に関してはニーズが高いことがわかる。

地域活性化の成功事例に学ぶと、徳島県上勝町(かみかつちょう)(本号トピックス参照)では独自のモデルを展開し地域住民がビジネスに関与している。また、道の駅や農産物直売所とタイアップした地域産品を販売したり、地域にある埋もれた資源を発掘したりすることで観光に繋げたところもみられる。これらから成功の要因を導き出すと、(1)市場のニーズを的確に把握すること、(2)キーとなる人間の存在とその人物を中心に「地域住民」と「外部の人間」が互いに連携して取り組むこと、(3)独自性を打ち出し、他の地域との差別化を図っていくこと、がポイントとなるだろう。(丸尾尚史)