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「早期経営改善計画」を策定し、事業の見える化を!(2017年11月)
上席主任研究員 橋本 公秀
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■中小企業数の減少と経営者の高齢化

日本の企業数の99%、従業員数の70%を占める中小企業が日本の経済を支えていることは改めて言うまでもない。その中小企業の数が、1999年から2014年までの15年間に100万者以上減少している。減少数がピークであったリーマンショック後も緩やかではあるが減少傾向にある(図表1)。

また経営者の平均年齢も高齢化の一途を辿っている。2016年の経営者の平均年齢は59.3歳となり、過去最高を更新している。今後さらに経営者の高齢化が見込まれ、事業承継という大きな経営課題も目前に迫っている。



図表1

■課題が多い事業承継

中小企業の中には経営環境の変化によって業績が悪化し、事業の存続が難しくなるケースがある。中には、時代の変化についていけず業績の悪化、将来性のなさから経営者が廃業を考える場合もある。

さらに子供がいないことから後継者が見つからない、子供がいても生き方が多様化し、子供が事業を引継ぎたいと思わない等のケースもある。そのため、業績が悪化していない企業でも後継者不在により事業を引継ぐことができない、という大きな問題が発生している。経営者はこのような事態を招かないよう、平時から事業の状況を明確に把握(事業の見える化)する必要がある。事業の見える化を進めていれば、廃業を選ばずにM&Aなど事業継続の選択肢も広がる。事業の見える化を進めるために平成29年5月から国が促進している「早期経営改善計画」の活用を考えたい。


■早期経営改善計画の策定

従来の「経営改善計画」は金融機関から返済条件を緩和してもらう等、金融支援を受けることを目的とした金融調整を伴う計画であった。一方「早期経営改善計画」は金融支援を目的とせず、早期から自社の経営を見直すために資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図等の基本計画を策定するものである。

早期経営改善計画を策定することにより自社の状況が見える化できるので、この計画をベースに事業承継を進めるための一歩としたい。またこの計画は、税理士や中小企業診断士等、国が認める専門家(認定支援機関)の支援を受けて計画を策定するもので、専門家に支払う費用の2/3(上限20万円まで)を国から補助してもらえるメリットがある(図表2)。



図表2

「今のところ業況面での大きな不安がないが、もう少し自社の状況を客観的に把握したい」、「資金繰りの把握を容易にしたい」、「事業承継を進めるために自社の事業内容を見える化したい」等、経営状況をより明確にしたい経営者には、身近な専門家のアドバイスを受けながら資金実績・計画表やビジネスモデル俯瞰図等の基本的な内容を作成する早期経営改善計画の策定をお勧めする。