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奈良県での観光消費が少ない観光客の特徴 (2018年2月)
事務局長・主席研究員 島田 清彦
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観光庁「全国観光入込客統計」で奈良県の観光入込客(観光目的)の2015年日帰り観光消費額単価をみると、県外居住者は4,446円(39都道府県中37位)で平均7,948円より3,502円少ない(-44.1%)。

2017年9月に当研究所が実施した「奈良県観光に関する県外居住者意識調査結果(*)」を見ても、3人に1人(31.4%)が「奈良県観光の際の支出金額は、他府県への観光の時よりも少ない」と回答。

県内での観光消費が少ないと回答した人(n=377)の特徴を見ると、属性(性別・年代等)は全体とほぼ同じ割合だが、その他の回答結果はやや異なる。観光・宿泊施設や地域としての受入態勢等の評価で「(やや)遅れている」は56.6%と観光客全体の35.4%より約21ポイント高く、評価が厳しい。

観光地奈良県としての「総合的な満足度」は、3人に1人(34.6%:全体17.8%)が「(あまり)良くない」と回答。個別項目の評価で「(あまり)良くない」は、「ホテル・旅館等の選択肢の豊富さ」51.1%〔全体27.8%〕、「飲食店のタイプ・数・立地・営業時間等」47.0%〔同28.5%〕、「食事・料理・B級グルメの種類や価格・内容等」42.7%〔同23.3%〕、「土産物の種類・価格・内容等」37.6%〔同19.8%〕の4項目で全体より約20ポイント高く、厳しい評価となっている。これら4項目は観光消費の増減に直結するものであり、観光消費の増大に向けて大幅な改善が必要である。

奈良県観光に関する考え方等で「(やや)そう思う」の回答状況をみると、約3人に2人(63.5%:全体31.8%)が「日帰り観光の滞在時間は、他府県への日帰り観光の時よりも短い」と回答。また、「泊まってみたいと思う旅館・ホテルが少ない」71.2%〔同44.2%〕、「訪れたいと思う観光地・観光施設が少ない」58.8%〔同39.6%〕、「手軽に泊まれるビジネスホテルなどが少ない」58.1%〔同34.6%〕、「観光客が求めるニーズと奈良県の魅力とがあまりマッチしなくなってきている」48.6%〔同23.8%〕の4項目も全体より約20~30ポイント高く、観光消費の増減に大きく影響する項目で厳しい評価が多いのが実態である。

観光客の滞在時間の延長、観光消費額の増大に向けて、地域としての受入態勢の改善とともに、飲食・宿泊施設・土産物等の多様化、水準向上などの取組み強化を期待したい。  (島田清彦)

*ネットアンケート、対象は大阪府・兵庫県・京都府の居住者1,200人。調査結果の詳細は2018年1月号特集「近隣府県から見た奈良県観光の現状と課題」を参照。



グラフ:奈良県の観光地としての評価


グラフ:奈良県観光に関する考え方等