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個人と企業の成長につなげる「人生100年時代の社会人基礎力」 (2018年4月)
主任研究員 吉村 謙一
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「社会人基礎力」とは、考え抜く力、チームで働く力、前に踏み出す力の3つの能力(12の能力要素)から構成され、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」として経済産業省が2006年から提唱し推進している概念である。

企業や若者を取り巻く環境変化により、基礎学力や専門知識に加え、それらをうまく活用していくための社会人基礎力を意識的に育成していくことが重要となってきており、大学教育で同基礎力を育成・評価するカリキュラムが一部取り入れられるなど、徐々に社会に浸透を見せている。

そうした中、2018年3月に同省では、「人生100年時代」を踏まえ、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるための力として、「人生100年時代の社会人基礎力(仮称)」と銘打ってこの力の再定義を行った。

具体的には、社会人基礎力をベースとしつつ、能力を発揮するにあたって、学び(何を学ぶか)、組合せ(どのように学ぶか)、目的(どう活躍するか)という3つの視点のバランスを図ることが、自らのキャリアを切りひらいていく上で必要であると位置付けている。

この検討が行われた同省の「我が国産業における人材力強化に向けた研究会」で報告されたアンケート調査結果によると、「若いほど“学び直し”に意欲的だが長時間労働や費用の自己負担面に課題あり」「半数以上の人が実現したい希望やキャリアへの希望がなく、理由は時間的・心理的余裕がないため」「働き手の7割は自分のキャリアやスキルの棚卸しをしたことがない。棚卸しの研修等の機会が企業から与えられている人は非常に少ない」などの課題が明らかになったという。

企業の成長には働き手各個人の成長が不可欠である。個人の成長につながる手厚い支援の実施、定期的なリフレクション(自己振り返り)の機会提供によるキャリアやスキルの棚卸しの援助、多様なフィードバックの積み重ねによる効果的な気づきの促進などの配慮が企業側には求められ、働き手側にもこの基礎力の視点で自らのキャリアを切り開く姿勢が必要となろう。

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