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新たなビジネスチャンスにつながる可能性のあるSDGsへの取組み (2019年7月)
主任研究員 吉村 謙一
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先般、2019年版の「中小企業白書」と「ものづくり白書」が公表されたが、いずれにおいても『中小企業におけるSDGsへの取組みの重要性』について一定の紙幅が割かれた。

SDGsとは「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals)」の略で、2015年に国連サミットで全会一致で採択された、国際社会全体の2030年に向けた環境・経済・社会についての目標である。関東経済産業局が2018年10月に管内の中小企業500社に対し実施したアンケートでは、SDGsのことを全く知らない企業が8割を超えており、未だ認知度が高い言葉とは言えないが、実は行政だけではなく企業や市民にも対応を迫るルール(努力義務)であり、企業規模に関わらずその内容を理解し実践することが求められている。

SDGsの「17のゴール(目標)と具体的な169のターゲット(達成基準)」は、様々な研究成果の蓄積や世界の潮流を背景に策定されており、ものづくり白書が指摘する通り「確度の高いニーズ情報の塊」ともいえる。従ってSDGsに対応することは、我が国の企業の問題点としてよく指摘される「自らの持つシーズから事業を考えがちで将来的なニーズ(顧客に何を提供すべきか)から出発して事業機会を考える力が弱い」という弱点を補い新たなビジネスチャンスにつながる可能性がある。

2019年5月に関西SDGsプラットフォームが関西地域におけるSDGsの取組み状況の調査結果を発表し、そこで各17ゴールに関する具体的な取組み内容をまとめている(表参照)。企業における具体的なSDGsの実践は緒に就いたばかりで、各社試行錯誤しているのが実態である。こうした事例を互いにフィードバックし合ってブラッシュアップしていくとともに、未着手の企業においてはまずはSDGs取組みへの第一歩を踏む出すことが望まれる。

また同調査結果では、SDGsの更なる推進のために必要なものとして「資金支援や補助金制度」「SDGs取組み企業に対する認定制度」などを求める声が多かった。行政サイドには、こうした声に応じてSDGs普及に係るインセンティブ等の検討も求められよう。


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