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地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。

観光産業(宿泊施設等)

奈良市および周辺主要ホテル9社の客室稼働率(単純平均)は、5月が前年同月比19.8ポイント上昇の35.1%、6月が同7.0ポイント上昇の37.4%、7月が同4.8ポイント上昇の46.8%であった。宿泊人数は、5月が前年同月比138.7%増の21,782人、6月が同5.7%増の21,205人、7月が同6.2%増の30,499人となったが、一昨年比では5月、6月が約1/3、7月が約1/2の宿泊人数で、各施設の経営は厳しい状況が続いている。

全国では、コロナ禍での滞在型観光の需要を取り込み、観光客数が回復傾向となっている観光地もあるが、奈良県の観光は文化観光が中心で、温泉地等の観光地と比べて回復の動きは鈍い。

足もとでは全国のコロナ新規感染者数が過去最多を更新し首都圏や大阪府などに緊急事態宣言が発令されるなど、宿泊施設を取り巻く状況は厳しさを増している。一方で、これまでの緊急事態宣言下と比べて宿泊のキャンセルは減少しており、ワクチン接種や自家用車の利用など、観光客自身がコロナ対策を徹底し、ウィズコロナの観光を楽しむ動きが見られる。

奈良県は、ガイドラインに沿った感染防止対策を行う宿泊施設等に対する認証制度の申請受付を5月から開始した。8月10日時点で100以上の宿泊施設が認証を取得しており、感染の制御が効いた状況下での経済活動の早期回復を後押しする。


木材関連産業(国産材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2021年6月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比11.0%増加し、3か月連続の増加となった。昨年の外出自粛の反動で消費者の家探しが動き出し、住宅メーカーの着工・販売も活発になっており、当面は持ち直しの動きが続くものと思われる。

農林水産省「木材流通統計調査」によると、2021年7月の国産材素材(丸太)の価格は、スギが前年同月比49.6%上昇、ヒノキが同95.5%上昇となった。木材製品価格は、スギが同14.8%上昇、ヒノキが同26.9%上昇となった。コロナ禍に端を発したウッドショックの影響により、依然として輸入材からの代替需要は根強く、価格上昇の趨勢は続いている。

県内原木市場における2021年1~6月期の取扱高(金額ベース)は、スギが前年同期比1.8%増、ヒノキが22.9%増、原木合計で10.8%増となった。仕入価格上昇分の販売価格への転嫁は概ね進んでおり、利益率もほぼ横ばいで推移している。

カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)の実現に向け、木材利用の拡大に期待が高まっている。輸入材の供給不足もあり、国産材に対するニーズは増しているが、国産材も人手不足等で急な増産に対応できず、供給に限りがある。搬出ルートの整備等、国産材の活用に向けて安定供給が可能な仕組づくりを求める声もある。


繊維関連産業(靴下・パンスト等)

日本靴下工業組合連合会の生産統計によると、奈良産地の2020年の生産量は靴下が7,222万点で前年比+2.6%(全国▲7.3%)、パンスト・タイツ等は982万点で同▲47.1%(全国▲29.8%)。靴下とパンスト・タイツ等の合計では奈良産地▲7.8%、全国▲19.4%。奈良産地の靴下の生産量は全国産地で唯一前年比プラスになったが、パンスト・タイツ等は全国平均よりも大きく落ち込んでおり、生産環境は依然として厳しい。

新型コロナの影響による店舗休業、テレワークや外出自粛の広がりなどから、ストッキングやビジネスソックスの需要が減少。都心商業施設に強かった企業やストッキング比率の高い企業の業績に大きく悪影響を及ぼした。企業業績の回復度合いにも業界内で二極化の傾向が表れており、この傾向は今後もさらに進む可能性がある。

県内業界に多いOEM生産の売上減少や利益率低下は続いており、コロナ禍に背中を押される形で、危機感を持った事業者の自社ブランドへの取組が活発化している。SNSを活用したマーケティングや販促のほか、顧客や取引先とのタッチポイントとしてリアル店舗を設け、ブランドコンセプトの発信やマーケティングの拠点として活用する動きも複数ある。少量多品種の高品質生産ができる奈良産地の特長を各社訴求し、「やり方次第で売上を増やせる」との前向きな声も聞かれる。


家電大型専門店

経済産業省「商業動態統計月報(6月確報)」によれば、2021年6月の奈良県の家電大型専門店販売額は前年同月比20.9%減の3,880百万円。店舗数は前年と同じ34か店(前月同様)となった。

政府による特別定額給付金の支給で比較的値の張る高価格帯モデルの購入が増加した昨年に比べ、今年はその反動を受けて売上はやや減少している。

コロナウイルス終息の目途が立たない中、引き続きテレワークなど自宅で過ごす時間は増えており、エアコンなど家電の使用頻度が増加。家計に与える電気代の負担を減らすため、省エネ性能が高い機種を選ぶ消費者が増えている。また、家での過ごし方を快適にするためにエステ機器やゲーム機器、コーヒーメーカーなどを購入する消費者も多い。AV家電については東京オリンピック・パラリンピックの「自宅観戦」が推奨されたため、有機ELや4K・8K液晶などの大型の高画質テレビや録画レコーダーなどが好調だった。また、テレワークやオンライン会議に必要なパソコンや周辺機器の売上は、以前に比べやや減少しているものの、安定的な需要が続いている。

EC(電子商取引)は緊急事態宣言に伴う臨時休業や営業時間短縮により昨年に引き続き増加傾向。テレビなどの大型家電をECで購入する消費者も増えており、消費者にとって情報収集や購入場所の選択肢の1つとして定着してきている。


プラスチック製品製造業

プラスチック製品製造業では、売上について昨年比では全体としてややプラスとなっているが、コロナ前の水準には戻っていない。新型コロナウイルス感染症の影響度合は取り扱う製品分野ごとに異なり、好不調の差が大きく出ている。

分野ごとに見ると、生活用品はホームセンター向けやメーカーが開設するEC直販などは好調で工場の操業度も高い。半導体や自動車向けでは昨年春の急減から回復し、概ね好調に推移している。一方、アメニティ容器など宿泊関連向けや食器など外食向けは厳しい状況が続いている。

主要な原材料であるナフサは、原油価格値上がりを受けて昨年のボトム期に比べ2倍近くの価格となっている。原材料価格の上昇分に対する価格転嫁は、自動車向けなどではある程度受入れられているが、生活用品などは困難で利益の圧迫要因となっている。また、エアバッグなどナイロン製品では需要回復と工場の稼働停止による原材料の生産能力低下から、製品の納期を確約できないケースが起こるなど極端な品不足に陥っている。

生産の引き合いは多く、工場新設を始め凍結となっていた設備投資の動きは回復している。今後のテーマとしては、温度、圧力や時間など製造の条件をビッグデータとして計測し、不良が起きる条件を調査究明することで不良発生を防止する取組みが注目されている。


製薬業

厚生労働省「薬事工業生産動態統計」によると、2021年1月~5月累計の医薬品の生産金額(及びそのうちの受託金額)は、前年同期比で、全国総計は生産▲4.0%(うち受託▲8.2%)で、奈良県は生産▲8.8%(うち受託▲0.6%)であった。全国総計と比較して奈良県は生産の減少幅はより大きく、受託は減少したものの落込幅は微減であった。

新型コロナウイルス感染症の影響を受け、県内企業の売上高は2020年上半期以来減少傾向にある。同感染症対策として、国民がマスクを着用するようになり、その効用として風邪をひきにくくなったため、一般用医薬品では風邪薬の売上高が落ち込んでいる。

一部医薬品の販売数量の減少や薬価引き下げによる売上高の減少を挽回するため、大手製薬会社から後発医薬品の新規製造受託に注力している企業もある。

また、通信販売は消費者との人的接触がなく新型コロナ感染防止策として有効であるため、通信販売事業に注力する企業もある。ドリンク剤を扱う企業では、女性を新たな顧客ターゲットとし、健康・美容面を前面に打ち出すことにより、積極的に販売展開している。具体的手法の一つとして、女性の購買行動に合致する、訴求力のあるホームページを提供している。

2021年2月・3月に、後発医薬品メーカーが業務停止命令を受け、監督官庁の厚生労働省は後発医薬品メーカーに対し、早期の法令遵守体制の整備を強く求めている。また、厚生労働省は医療用医薬品に占める後発医薬品の使用割合を80%以上に目標設定しており、後発医薬品メーカーにとって販売数量が増加する利点はあるものの、毎年の薬価引き下げに加え、体制整備に係る品質確保の費用負担も増加することから、県内企業にも影響を与えている。


乗用車販売店

奈良運輸支局及び奈良県軽自動車協会によると、奈良県内の2021年7月の乗用車新車販売台数(普通+小型+軽)は3,130台(前年同月比▲12.1%)で、2か月連続で前年を下回った。内訳を見ると、普通車+小型車が2,018台(▲2.0%)で2か月連続の減少、軽自動車が1,112台(▲25.9%)で10か月ぶりの増加となった。1~7月の累計では、普通車+小型車が15,194台(前年同期比+5.9%)、軽自動車が9,391台(+8.9%)で、合計でも+7.0%だった。

2020年の4、5月に緊急事態宣言発出で落ち込んだ反動で、今年の4、5月は大きなプラスとなった。店頭の客足は結構戻っており、今後登場する新車効果も見込んで期待感は高まっているが、長引く半導体不足による生産調整などの影響で、新車納期が1年以上先となるケースもあり、販売台数にも影響を及ぼしている。そのため中古車に人気が集っているが、こちらも品薄状態が続いており価格が値上がりしている。

ディーラー各社では、コロナ禍を業務改善・体制強化のチャンスと捉え、オンライン商談ツールの導入やSNSの活用など、アフターコロナに対応した新たな営業スタイルの模索を続けている。高齢者に対する公共交通機関以外の近距離モビリティ手段の提供などの社会課題への対応も、各メーカーやディーラーは取組を進めている。


運輸業

道路貨物運送業は、生活必需品などコロナ禍においても需要の底堅い商材があるものの、イベントや外食関連など外出自粛の影響がある商材の荷動きが低調で、全体の仕事量は減少している。ほとんどの中小・零細事業者は、目先の仕事を確保することに精一杯であることから、荷主の立場は一段と強くなっている。そのような背景から国土交通省が2020年4月に創設した「標準的な運賃の告知制度」における届出は低迷しており、奈良県内の動きも鈍い。トラック運転手の低賃金・長時間労働を是正し人手不足の解消を目的とした制度で、荷主との交渉では基準となるが、コロナ禍で荷動きが低迷するなか低価格を売りとした営業など、制度の趣旨と逆行する動きも見られる。業界団体では荷主向けに制度の趣旨を周知するなど対策を強化しており届出は徐々に増加しているが、荷主都合を優先せざるを得ない状況は当面継続すると思われ、今後は実効性の確保が課題となる。

道路旅客運送業は、乗合バスが企業のテレワークや大学等のオンライン授業の影響で県内の利用者がコロナ前との比較で3割程度減少、タクシーも飲食店の時短営業の影響等で夜間利用が激減するなど、厳しい経営環境が続く。貸切バスや観光タクシーも需要が激減しており、各社は雇用確保と経費削減のため、国の雇用調整助成金や休車の特例措置を活用し、この苦境を凌いでいる状況である。公共交通に携わるエッセンシャルワーカーとして業界ではワクチン接種がいち早く進んでおり、車内の抗ウイルス・抗菌対策やキャッシュレス決済などと合わせ、安全・安心のサービス提供を通じ、利用者からの信頼獲得に努めている。

運輸業界は燃料費の上昇と運転手の高齢化・人手不足といった共通の課題に直面している。業界全体が一丸となりその対策に取り組んでいるが、各事業者においては、コロナ対策と合わせ、中長期的な視点からの難しい判断が求められている。