一般財団法人 南都経済研究所地域経済に確かな情報を提供します
文字サイズ
ホーム > 経済動向 >県内地元産業の現況
県内地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。


流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると3月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比1.9%減少(近畿合計:2.0%増)と前年を下回った。

商品別内訳をみると、飲食料品は前年と比較して0.2%減少(同1.5%増)、衣料品が3.2%減少(同5.2%増)、身の回り品が2.4%増加(同9.0%増)。近畿合計では、大阪地区の百貨店を中心に客足が戻り、春物衣料の販売が好調だったことからプラス幅が大きくなったが、奈良県では身の回り品を除き、前年を下回る結果となった。

当研究所のヒアリングによると3月、4月の県内百貨店・スーパーにおける状況は、3月下旬に新型コロナウイルス対策の「まん延防止等重点措置」が全面解除されたことを受けて、消費者の動きが活発になった。

前年に比べ行楽地を訪れるなど外出機会の増加により、アウトドア用品やゴルフ用品、3年ぶりに行動規制のないゴールデンウィークを旅行や行楽地で過ごす人の増加によるスーツケースの売れ行きが好調であった。一方で、これまで自宅時間を楽しむために購入されていた調理家電やインテリア雑貨などのニーズに減少傾向が見られる。

食料品については、巣ごもり需要は減ったもののコロナ禍での自宅滞在時間が長くなったことによる自炊疲れなどにより、自宅で手軽に食べられる総菜や弁当、冷凍食品の人気は依然として高い。さらに最近では、長い外出自粛期間の運動不足や健康志向の高まりから、カロリーや糖質を抑えたビールテイスト飲料やノンアルコール飲料への関心の高まりが感じられる。

そうした中、昨年秋ごろから続く食品や日用品の値上げに対する消費者の節約・倹約志向は引き続き強い。ある店舗では「本当に必要な生活必需品だけを購入し、余計なものは買わないよう消費者のマインドが変化してきた」と話す。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル8社の客室稼働率(単純平均)は、2月が前年同月比10.1ポイント上昇の45.5%、3月が同16.0ポイント上昇の61.4%、4月が同28.3ポイント上昇の64.9%であった。また宿泊人数は、2月が前年同月比34.7%増の22,481人、3月が同42.2%増の35,882人、4月が同109.7%増の37,148人であった。3月下旬に全国でまん延防止等重点措置が解除されたことで観光マインドが回復し、4月には宿泊者数がコロナ前(2019年4月)の約7割となった。ゴールデンウィークのピーク時にはほぼ満室となる施設も出てきたが、旅行日数はコロナ前よりも短めに設定されるケースが多いようである。

修学旅行はコロナ禍で都市部の訪問を控える動きがある中、奈良県がその受け皿となっている。奈良県と奈良市は宿泊費とそれに伴う体験プログラムの利用に対する補助金で修学旅行の誘致を図っており、県民割「春のいまなら。キャンペーン2022」とともに宿泊施設の経営を下支えしている。

原材料価格の高騰は、宿泊施設にとって食材の仕入価格や光熱費の上昇につながっているが、単純な価格上乗せによる転嫁が利用者の理解を得るのは難しい。一部施設では、寺社との連携や地域食材を使用したメニュー提供など、奈良の魅力を打ち出すことで利用者の満足度を高め、価格を何とか維持しようとする動きがみられる。


木材関連産業(集成材・外材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2022年3月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比0.6%増加し、2か月ぶりの増加となった。世界的に資源価格が高騰するなか、国内でも建築資材価格の上昇基調が続いている。資材の供給不足・価格高騰で住宅の販売価格への波及が進めば、受注の押し下げにつながる懸念がある。

(一財)日本木材総合情報センター「4月の木材価格・需給動向」によると、米材丸太・構造用集成材は、入荷は順調であるが価格上昇が続く模様。国産合板は供給不足と価格高騰が続いている。

ウッドショックの影響が長期化し、輸入材の価格は依然として高値圏にあるが、入荷量は落ち着きを取り戻している。一方で、国際物流は混乱が続いており、コンテナ不足で運送コストが急騰している。必要材の在庫確保のために新たな調達ルートの開拓を図るとともに、製品価格への転嫁を進め、収益確保に取り組んでいる業者もある。

農林水産省はロシアのウクライナ侵攻による輸入木材の価格高騰や調達難に対応するため、国産材製品への転換に向けた建築物の設計・施工方法の導入・普及や、緊急的な増産のための輸送費等に対する支援を、政府の原油価格・物価高騰に対応する「総合緊急対策」に盛り込んだ。国策として木材の安定供給に向けた施策が進むなか、木材関連産業はこれを追い風にしたい。


繊維関連産業(靴下・パンスト等)

経済産業省「生産動態統計」によると、2022年1月~3月の靴下(パンスト除く)生産数量は12,116千点と前年同期比▲5.5%。パンスト生産数量は10,795千点と同▲20.8%だった。

新型コロナによる社会・経済活動への影響が緩和され、業界全体の業況は足もとで回復傾向にある。一方で、ロシアによるウクライナ侵攻で原材料価格や物流コストの上昇、急激な円安進行等悪材料が重なり予断を許さない状況。今後は適切な価格転嫁を進められるかが課題。また、中国での新型コロナの感染再拡大で上海のロックダウンが長期化する等、綿製品を中心に原材料供給が滞るリスクが高まっており、調達先の分散等によるサプライチェーン再構築の動きが見られる。

ストッキング関連の需要低迷は特に深刻。インバウンド需要の消滅、テレワーク等の定着が要因であり、大手メーカーでは国内工場を閉鎖して中国へ生産拠点を移転する動きも見られる。

奈良県内の企業も経営環境悪化への対応に取り組んでいるが、状況は二極化している。最終製品まで作る体力やブランド力がある企業、医療品向け等高付加価値製品を提供する開発力のある企業などでは価格転嫁が進展する見込みがある一方で、定番商品が主力の企業や下請け企業では価格転嫁が難航している。なお、値上げすると売上が落ちるリスクもあり容易ではない。


建設業

国土交通省の建築着工統計調査により2021年4月から2022年3月までの1年間の県内の工事費予定額をみると、全体の予定額は1,810億円で、民間工事は前年比18.5%の増加、公共工事は同38.0%の減少となった。なお、民間の建築物の棟数は前年比19.9%増、床面積は27.9%増。

上記調査のとおり、民間工事では、経済活動再開の動きから持ち直しの傾向がみられた。また、公共工事は、建築物の受注棟数は減少しているが、京奈和自動車道の大和御所道路・大和北道路等の国土交通省による道路整備事業の他、自治体の新庁舎建設事業や大学の新キャンパス造成工事等が発注されている。

建設資材については、鉄筋、鉄骨、コンクリート、木材等、全般的に価格が高騰している。供給不足で調達に数か月を要した事例や、工期の延長につながった事例も発生している。建物の内装関係では、半導体不足や中国国内の感染対策の影響を受け、水まわり設備や空調機器の供給に遅れが生じている事例もみられる。

建設現場では作業員の確保が課題となっているが、県内においても、建設現場に直接行かずにウェアラブルカメラ等を利用して材料確認、段階確認、立会を行う「遠隔臨場」の試行が進んでおり、デジタル技術の導入による建設現場の生産性向上への期待が高まっている。


機械関連産業

内閣府「機械受注統計」によると、全国の2022年3月の機械受注は、工作機械が前年同月比27.2%増加で15か月連続の増加。電子・通信機械は同9.6%増加で18か月連続の増加。産業機械は同2.9%増加で2か月ぶりの増加となった。

「奈良県鉱工業指数」(2015年=100:注)で奈良県の2022年3月の機械の生産指数(原指数)をみると、一般機械工業は前年同月比16.3%増の101.3、電気機械工業は同454.2%増の53.6、輸送機械工業は同17.6%減の75.4だった。

*注:抽出調査のため生産量全体の増減を示すものではない。

奈良県内の企業の動きをみると、昨年末からの需要回復により自動車生産、半導体受託製造への設備投資、ICT関連などは活況となっている。コロナ前の水準には戻っていないものの需要回復の勢いは強い。

一方で、オミクロン株のまん延で中国、東南アジアでのロックダウン、物流の混乱や国内工場の稼働停止による原材料の品薄傾向が強まった。加えて、エネルギー、素材価格の高騰が原材料価格のさらなる上昇として現れており、原材料の安定的確保を喫緊の経営課題とするケースも見受けられる。

受注の好調と生産現場の人手不足を受け新規設備投資意欲は強いが、ここでも半導体や部品の不足による機械設備の納期長期化が目立つ。