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県内地元産業の現況  
奈良県内の繊維関連産業・流通小売業等の地元産業の現況に関する情報を提供しています。

*グラフを掲載した「地元産業の現況」(PDF版)はこちらをご覧ください。


観光産業

奈良市および周辺主要ホテル8社の客室稼働率(単純平均)は、8月が前年同月比20.9ポイント上昇の70.2%、9月が同21.3ポイント上昇の67.9%、10月が同17.6ポイント上昇の76.0%であった。また宿泊人数は、8月が前年同月比62.0%増の47,744人、9月が同66.7%増の40,702人、10月が同54.9%増の49,130人であった。

10月から全国旅行支援が実施され、秋の行楽シーズンの旅行需要が喚起された。奈良県では「いまなら。キャンペーン2022プラス」で県民割を全国展開しており、全国旅行支援に対しても割引率や地域クーポンを独自に上乗せすることで、奈良県内への誘客を推進する施策を展開している。修学旅行も好調で、関東方面など遠方からの宿泊需要が堅調。これらが寄与し足もとの宿泊人数はコロナ前の水準を概ね回復している。一方で増加した業務量に見合う人材確保は困難で、人手不足への対応が各施設の喫緊の課題となっている。

全国旅行支援の実施と合わせ水際対策が緩和され、外国人観光客についてパッケージツアーに限定する措置が解除されるとともに査証免除措置が再開された。外国人観光客を目にする機会も多くなったが、観光消費に対する効果は限定的なようだ。奈良の食や自然、歴史といった魅力をインバウンドに伝え、持続可能な観光地としての歩みを進めることがポストコロナの観光には重要となる。


流通小売業

近畿経済産業局発表の「百貨店・スーパー販売状況」によると9月の奈良県の百貨店・スーパー販売額(全店ベース、速報)は、前年同月比0.7%増加(近畿合計:7.1%増)と前年を上回った。

商品別内訳をみると、飲食料品は前年と比較して0.7%増加(同1.2%増)、衣料品が3.3%増加(同18.8%増)、身の回り品が7.4%増加(同36.7%増)。飲食料品、衣料品、身の回り品すべてが前年を上回る結果となった。大阪や京都など都市部の百貨店では、外出機会の増加や海外からの入国規制の緩和に伴うインバウンドによる来店客数が増え、販売額が好調に転じた。奈良県内でも行楽地を訪れる人が増加し、前年を上回る結果となった。

9月、10月の県内百貨店・スーパーにおける状況は、行動制限の緩和による来店客数の増加が見られたものの販売価格の上昇により、消費者の節約志向は一段と強くなっているとの声もある。

食料品は、円安などによる原材料高の影響により今年春から商品の値上げラッシュが続いている。9月には酒類の大幅な値上げを前に、駆け込みでまとめ買いをする消費者も見られるなど、少しでも安く購入したいという消費者心理が窺える。

衣料品では、クールビズやビジネスカジュアル、テレワークの定着によりスーツの売れ行きが年々減少している。特に最近はビジネス用のジャケットやシャツなどを1店舗で揃えず、アイテム毎にそれぞれ気に入った店舗やネットショッピングを利用して購入、普段着は毎年季節ごとにファストファッションで買い替えるなど消費者の購入スタイルに多様化が見られる。

今後も引き続き物価高により家計負担が重くなることが予想され、消費者の生活防衛意識がますます強くなり買い控えが進むことが懸念される。また、消費者の嗜好の多様化に対応するため「企業の業態も変化が必要になってきた」との声も聞かれる。


木材関連産業(集成材・外材)

国土交通省「住宅着工統計」によると、2022年9月の木造住宅の新設着工戸数は前年同月比6.1%減少し、6か月連続の減少となった。世界的な資源価格の高騰が長期化するなか、国内でも建築資材価格の上昇が続いている。加えて、半導体や水まわり設備の供給不足も深刻化しており、受注の押し下げにつながっている。

(一財)日本木材総合情報センター「10月の木材価格・需給動向」によると、構造用集成材は港で保管する在庫量が大幅に増加し、価格は下落局面に入りつつある。中国のロックダウン政策が解除され、上海で滞留していた欧州産材が日本に向けて一気に動き出したことが一因と考えられる。流通価格の動きも鈍く、価格下落前の高値で調達した在庫をわずかな利益で販売を強いられた事例もみられる。一方、為替の急激な円安で、今後の安定確保を懸念する声もある。国産合板も在庫が増加し、受注は軟調に推移している。

2021年10月に「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が施行されたこともあり、カーボンニュートラル実現への取組みとして、関東を中心に高層ビルやマンションに木造化の動きがみられる。新設住宅着工戸数が減少するなか、店舗・事務所等の商業建築や、幼児・高齢者関連の福祉施設等、非住宅分野への需要が期待されている。


繊維関連産業(靴下・パンスト等)

経済産業省「生産動態統計」によると、2022年7月~9月の靴下(パンスト除く)生産数量は12,247千点と前年同期比▲1.2%。パンスト生産数量は9,935千点と同▲21.0%となった。

外出自粛ムードのさらなる緩和もあり店頭に買い物客が戻りつつある一方で、物価上昇の余波で生活必需品の予算が膨らんだため、顧客が購入数量を減らして節約する動きが出始めており、必ずしも売上の増加につながっていない。

そういった中にあって、靴下メーカーの業績については明暗が分かれており、高価格帯の自社ブランド製品を販売するメーカーでは売上が回復する明るい兆しが出てきた一方で、大衆層向け製品の生産委託を受けるメーカーでは生産数量が伸び悩んでいる。

また、ロシアによるウクライナ侵攻で物価高騰や急激な円安進行、賃金水準の上昇等の複合的な要因で原価が上昇している一方で、販売価格への転嫁は進んでおらず、利益率が低下している。

今後は原価の上昇を織り込んだ春夏物の新製品の商談が進み、徐々に価格水準が上がるものと見込まれるが、販売価格についてはターゲットとする顧客の価格への敏感さを考慮する必要があり、大衆品である安価な製品については売上への影響が出やすく、メーカー各社は売上と利益率双方を改善する対応に苦慮している。


建設業

国土交通省の建築着工統計調査により2021年10月から2022年9月までの1年間の県内の工事費予定額をみると、全体の予定額は2,040億円で、民間工事は前年比18.3%の増加、公共工事は同10.0%の減少となった。なお、民間の建築物の棟数は前年比5.8%増、床面積は同29.1%増。

上記調査のとおり、民間工事は経済活動再開の動きから持ち直しの傾向が続いている。公共工事は建築物の受注棟数は減少しているが、京奈和自動車道の大和北道路・大和御所道路等の国土交通省による道路整備事業や、防災機能を備えた「道の駅」(奈良市中町)新築工事等が発注されている。

建設資材は長納期化、価格高騰の状況が続いているが、一部の品目では納期に目途が立たないなど、調達に支障をきたす事例が増えている。契約後に資材価格が大幅に上昇した影響を受け、採算が悪化した工事も出てきている。

建設現場においても新しい技術の導入が進み、県内でも、傾斜地での作業等の負担軽減策としてアシストスーツ等の補助装具が利用され、作業の安全性や効率性の向上に効果を発揮している。また、現場に直接行かずに、工事の進捗確認や測量にカメラを搭載したドローンを活用する動きも広まっている。業界全体で深刻な人手不足が続くなか、生産性の向上につながるような様々な取組みが行われている。


機械関連産業

内閣府「機械受注統計」によると、全国の2022年8月の機械受注は、工作機械が前年同月比10.9%増で20か月連続の増加。電子・通信機械は同13.4%減で2か月連続の減少。産業機械は同15.1%増で6か月連続の増加となった。

「奈良県鉱工業指数」(2015年=100:注)で奈良県の2022年3~8月の機械の生産指数(原指数・平均)をみると、一般機械工業は前年同期比10.2%増の78.7、電気機械工業は同268.3%増の15.1、輸送機械工業は同8.7%減の68.2だった。

*注:抽出調査のため生産量全体の増減を示すものではない。

奈良県内の企業の動きをみると、コロナ禍、中国・東南アジアでのロックダウンによる生産・物流の停滞から半導体をはじめ基幹部品の供給不足が続いていたが、今夏より徐々に品薄状況が解消傾向にあり、準じて引き合い・受注量の増加に繋がっている。

一方で、高騰を続ける部素材価格に対し、価格転嫁交渉を行っているが、昨年度に続き再値上げの動きもみられ、燃料費・電気代上昇による製造経費の増加も相俟って、価格の転嫁がなかなか進まないのが現状である。

受注の回復と生産現場の人手不足から人材採用を強化しているが、採用環境は厳しい状況で、昨今の物価上昇も踏まえ、賃金の引き上げを模索する企業も多い。