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奈良の観光振興に向け、新たな層をターゲットに!(2014年9月)
主席研究員 丸尾 尚史
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■「じゃらん宿泊旅行調査」による奈良の観光分析

リクルートじゃらんリサーチセンターが毎年実施する「じゃらん宿泊旅行調査2014」(※)から、奈良県観光の特徴をみると、宿泊旅行時の目的は「名所、旧跡の観光」が全国平均を大きく上回っている一方、「地元の美味しいものを食べる」や「宿でのんびり過ごす」、「温泉や露天風呂」は全国平均を下回っている。このうち食べ物に関しては、県や関係団体等の努力もあって、ある程度充実してきたものの、調査結果からは旅行者への訴求力がまだまだ低い状況にあることがわかる。

(※)宿泊を伴う旅行実態等の把握を目的に年1回、一般消費者を対象に実施。2014年の有効回答数は15,413件。

図1

また同調査によると、全国的に「一人旅」が上昇トレンドにある。2013年度の全国平均は15.4%で、10年前に比べ1.5倍になる中、奈良県は18.0%と全国平均を2.6ポイント上回る。逆に奈良県が全国平均より少ないのが目立つのは「恋人との旅行」(全国7.0%、奈良県3.6%)や「夫婦2人での旅行」(全国24.8%、奈良県20.6%)。

これまで、奈良の観光は、「中高年の夫婦」や「成人した親子」が比較的多いとされていたが、最近「中高年の一人旅」が増えており、このことが原因で相対的に「2人」の割合が低下したものと思われる。

■総合的な満足度をあげるためには

同調査の「総合的な満足度とその判定根拠となる8つの評価項目」は、リピーターの状況を占ううえで好材料であるが、奈良県の総合的な満足度順位は36位と低い。評価項目の奈良県と全国平均の数値をみると、全国平均を上回るのは3項目、下回るのが5項目。ただ、奈良県が上回る項目(強い項目)は概ね全国平均との乖離が小さく、逆の場合(弱い項目)は、乖離が大きい傾向がある。


図2

じゃらんリサーチセンターでは、全国的に旅行人口の減少が著しい「20~34歳」の若者を敢えてターゲットにし、「ある年齢だけに限定して、スキーのリフト代やサッカーJ1・J2観戦を無料にする」企画を立ち上げた。その結果、対象年齢はもとより他の年齢の新規客やリピーターが増え、さらに副次的な経済効果もあがっているという。

満足度を高め、リピーターを増やすには、弱い項目の補強や強い項目のさらなる向上が必要であるが、温泉や宿、食の充実には限界がある。そこで、「子供連れの親子」や「若者」、「一人旅」など、どちらかといえば「これまで主対象としてこなかった層」をターゲットとしたイベント(例えば、夏休み自由研究の助けとなるイベント)の実施を検討してもよいのではないか。(丸尾尚史)