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インバウンドの急増をミニバブルに終わらせないために(2016年10月)
事務局長・主席研究員 島田 清彦
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■関西で外国人延べ宿泊者数が大幅に増加

観光庁「宿泊旅行統計調査」によると、日本の2015年の延べ宿泊者数は5億408万人泊(前年比6.5%増)。日本人は前年比2.3%増に留まったが、外国人は6,561万人泊で同46.4%増と大幅に伸び〔2012年(2,631万人泊)の2.5倍(149.3%増)〕、全体に占める外国人の割合は13.0%となった。

宿泊者数46位の奈良県の外国人延べ宿泊者数は26万人(国籍別:中国49%)で前年比78.0%増と、滋賀県106.8%に次ぎ関西で2位の増加率。全体に占める外国人の割合は、関西20.8%は全国13.0%より約8ポイント高い。特に大阪府29.5%、京都府25.1%が高く、奈良県も10.1%と関西で3位の高さ。

但し、2012年比でみると、滋賀県3.2倍、和歌山県2.7倍、兵庫県2.4倍等が大きく伸びている中、奈良県は1.5倍(147.9%)と伸び悩んでいる。

また、関西の外国人延べ宿泊者数は1,592万人で全国の24.3%を占めているが、奈良県のシェアは全国の0.4%、関西の1.6%に留まり、外国人宿泊者にとって奈良県の存在感はやや薄いと言える。

2015年の大阪府の客室稼働率は84.8%で前年81.0%より約4ポイント増加。同率が80%台後半の月は、奈良県の外国人延べ宿泊者数も大幅に増加しており、大阪で客室を確保できなかった外国人が奈良県に流れてきた様子がうかがえる。


■インバウンドの大幅増加が続くが・・・

日本政府観光局の発表によると、2015年のインバウンド(訪日外国人)は前年比47.1%増の1,974万人で1964年以降最大の伸び率となった。奈良県を訪れた訪日外国人は推定103万人(*)で、2014年比の1.6倍、2012年(28万人)比の3.7倍に膨らんだ。

*日本政府観光局が公表している「訪日外客数(商用客を含む)」〔2015年1,974万人:前年比47.1%増〕に、観光庁が実施した「訪日外国人消費動向調査」の2015年の都道府県別訪問率〔奈良県5.2%〕を乗じて推計。

訪日外国人の訪問地での宿泊率(*)をみると、100%超の府県がある中、奈良県は25.0%と関西で最も低い(県外宿泊による日帰り観光が主流)。

*外国人延べ宿泊者数÷訪日外国人訪問者数×100

2018年末頃迄に大阪市内の客室数は1.2倍に増える見込みであり、大阪から溢れて流入している外国人宿泊者の勢いは、いずれ弱まると懸念される。

ミニバブルに甘んじることなく、奈良の魅力発掘・創造、外国人宿泊者の国籍の多様化、リピーターの増加、SNS等を活用した情報発信の強化等により県内宿泊を希望する訪日外国人を増やす地道な努力を行うとともに、日本人宿泊者の増大にも目を向けていく必要があると考える。 (島田清彦)

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