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気になるインバウンドの動向 (2018年1月)
主席研究員 丸尾 尚史
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■インバウンドの増加

インバウンド(訪日外国人観光客)が好調だ。日本政府観光局によると平成29年は11月までの訪日外客数累計は26,149千人となり、過去最高だった平成28年の24,040千人を更新した。

奈良県への訪問も増加しており、平成23年以降の推移をみると増加率は全国を上回る(図表1)。

訪問者を国・地域別にみた割合、奈良県の特徴は、全国に比べ中国の割合が高く、韓国の割合が低いことである(図表2)。中国は、①訪日客の3割弱を占め、その多くが大阪府、京都府へ訪問することから、宿泊施設のオーバーフロー客が奈良へ流れている、②平均泊数が11.8泊(訪日外国人の消費動向 平成28年(観光庁))と多く、大阪や京都訪問の「ついで訪問」として半日程度の訪問ニーズがある、と考えられる。訪問地が奈良公園周辺に集中しているのもこれを裏付ける。一方、韓国は約2割が福岡空港または博多港から入国する。さらに、平均泊数が4.5泊と中国(同11.8泊)や台湾(同7.4泊)に比べ短いこともあり、訪問は九州地方や京都、大阪、東京といったメジャーな観光地が中心で、時間的な面からみて奈良は少ない。






■「有償での住宅宿泊」(民泊)利用有無での比較

昨今、宿泊施設の不足等から民泊が増え、訪日外国人の利用が増加している。「訪日外国人消費動向調査 平成29年7-9月」(観光庁)によると、日本滞在中の利用宿泊施設として「有償での住宅宿泊」は、「ホテル」(75.1%)「旅館」(18.2%)に次ぐ第3位の12.9%を占める(図表非掲載)。また、都道府県訪問率の上位10位を「有償での住宅宿泊」(宿泊地は問わない)の利用有無で比べると、「京都府」「大阪府」「奈良県」の3府県のみ、利用者の訪問率が非利用者よりも高かった(図表3)。12項目の「旅行中にしたこと」のうち、「利用者割合>非利用者割合」で、かつ差が最も大きいのは「日本の歴史・伝統文化体験」だった(図表4)。

次に、「有償での住宅宿泊」の有無別による1人あたりの旅行支出(全国籍・地域)をみると、宿泊料金は単価の違い等から約7千円の差があるものの、飲食費、交通費、娯楽サービス費、買物代は大差なかった(図表5)。











■おわりに

インバウンドは着実に増加し、その関心はリピーターの増加もあって都市部(メジャー)から地方へ移りつつある。そういった中、「有償での住宅宿泊」は今後法整備が行われ、市場は拡大していくものと思われる。「有償での住宅宿泊」の増加が今後奈良県の観光にどのように影響を及ぼすのか、推移を見守っていきたい。(丸尾尚史)